今回は、土地の売買を検討している方に向けて、「小規模宅地等の特例」という制度について紹介したいと思います。
この制度は、土地の譲渡益に対する所得税や住民税を減額できるというものです。
どんな土地が対象になるのか、どんな要件があるのか、詳しく見ていきましょう。
「小規模宅地等の特例」とは
「小規模宅地等の特例」とは、土地を売却したときに発生する譲渡益に対して、一定の条件を満たす場合に、所得税や住民税を減額できる制度です。
この制度は、平成28年度税制改正で導入されました。
背景としては、高齢化や人口減少により、空き家や空き地が増える問題を解決するために、土地の有効活用を促進することが目的です。
メリットとしては、明らかに税金を節約できるということです。
例えば、1000万円で購入した土地を1500万円で売却した場合、通常は500万円の利益に対して所得税や住民税がかかります。
しかし、小規模宅地等の特例を適用すれば、500万円が非課税となるため、税金がゼロになります。
これは、約150万円程度の節約になります(税率は20%程度と仮定)。
また、小規模宅地等の特例は、住宅用地であればどんな目的で売却しても適用されます。
つまり、自分で住んでいた土地や賃貸用に貸していた土地でも構いません。
また、売却後に別の住宅用地を購入する必要もありません。
これは、他の制度(譲渡所得特別控除など)と比べて柔軟性が高いということです。
「小規模宅地等の特例」の対象となる土地
「小規模宅地等の特例」の対象となる土地は、以下の3種類です。
- 特定居住用宅地等
- 特定事業用宅地等
- 貸付事業用宅地等
それぞれの内容を見ていきましょう。
特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、自分や家族が住んでいた土地や建物です。
この場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 譲渡日の前日までに5年以上継続して居住していたこと
- 譲渡日から2年以内に新たな住宅を購入したり、賃貸住宅に入居したりすること
- 譲渡益が1,000万円以下であること
特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、自分や家族が経営する事業に使用していた土地や建物です。
この場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 譲渡日の前日までに5年以上継続して事業に使用していたこと
- 譲渡日から2年以内に新たな事業用土地や建物を取得したり、賃借したりすること
- 譲渡益が1,000万円以下であること
貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、自分や家族が所有する土地や建物を他人に貸し付けていたものです。
この場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 譲渡日の前日までに5年以上継続して貸し付けていたこと
- 譲渡益が500万円以下であること
それぞれの土地の要件について
「小規模宅地等の特例」の対象となる土地には、それぞれの種類に応じて、さらに細かい要件があります。
ここでは、適用要件や2世帯住宅、老人ホームなどの特殊なケースについて説明します。
適用要件
「小規模宅地等の特例」を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 譲渡日が平成28年4月1日から令和5年3月31日までの間であること
- 譲渡益が1,000万円以下であること(貸付事業用宅地等の場合は500万円以下)
- 譲渡益が譲渡価額の50%以上であること
- 譲渡益が土地の取得費に対する10%以上であること
2世帯住宅
2世帯住宅とは、自分と家族以外の人が同居している住宅です。
この場合、「小規模宅地等の特例」を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 同居している人が親族であること
- 同居している人が自分や家族と同じ生活を営んでいること
- 同居している人が自分や家族と同じ住所に登録されていること
- 同居している人が自分や家族と同じ税務上の扶養家族であること
老人ホーム
老人ホームとは、自分や家族が入居している有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設です。
この場合、「小規模宅地等の特例」を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 入居した施設が国や都道府県などの公的機関から認可されていること
- 入居した施設に5年以上継続して入居していること
- 入居した施設に入居する前に自分や家族が住んでいた土地や建物を売却すること
まとめ
今回は、「小規模宅地等の特例」という制度について紹介しました。
この制度は、土地を売却した際に発生する税金を減額できるというものです。
対象となる土地は、自分や家族が住んでいた土地や建物、自分や家族が経営する事業に使用していた土地や建物、自分や家族が所有する土地や建物を他人に貸し付けていたものです。
それぞれの種類に応じて、さまざまな要件があります。
この制度を利用することで、土地の有効活用や住み替えを支援されます。
土地の売買を検討している方は、この制度をぜひチェックしてみてください。